【田村市】歴史人物「安倍貞任」と田村市の意外なゆかり

2021.01.26
地域密着 #俘囚長#六郡の司#安倍文殊堂#安倍貞任#文殊山#歴史人物#田村市

古代大和朝廷の時代、東北以北は未開の地とされていました。平安時代の中期から、現在の福島から青森あたりまでの広い領域を治めていたのが、原住民とされていた安倍氏。安倍氏最後の俘囚長だった安倍貞任と聞けば知る人ぞ知る歴史人物ですが、その事実や詳細については諸説あり謎に包まれています。田村市と安倍貞任のかかわりについて探ってみましょう。

 

田村市に残る安倍貞任の足跡

田村市の船引エリアには、日本五大文殊の一つとされる安倍文殊菩薩堂があります。このお堂は、領主安倍貞任が文殊山を巡検した天喜元年(1053年)に文殊菩薩をお祀りしたことがはじまりと言われています。安倍貞任は、11世紀陸奥国俘囚の長として東北地方を広く統治していました。貞任が髪の毛に結わえていた守本尊の文殊菩薩をお祀りしたとも伝承されています。

地元では文殊様、受験の神様と呼ばれ親しまれているスポット。田村市指定史跡として、観光客にもひそかな人気のエリアです。この安倍文殊堂には、有形民俗文化財として「安倍文殊菩薩堂の算額」や絵馬「半肉彫獅子の図」が奉納されています。江戸時代には、安倍貞任の子孫といわれる三春城主の秋田氏が境内に桜を植え、厨子や家紋入りの幕を寄せました。昔から熱心な信徒達によって大切に守られてきたお堂には、今でも合格祈願や恋愛成就を願う絵馬がたくさん納められています。

必見は、約300mにわたる御堂に続く参道の杉並木。高さの平均は35m、古いもので450年と言われる樹齢の杉に囲まれた参道に流れるのは、静謐な空気。126本の杉並木が厳かに立ち並ぶこの場所は、神秘的なエリアとして観光客から高い人気を誇ります。

この参道は、毎年伝統行事の「稚児行列」が行われることでも有名。例大祭の日に、地元の子供たちが平安時代を思わせる華麗な装束を身に着け、学業成就を願いながら登ります。住職の吹くほら貝の音による先導にて、梵天を持った稚児や世話人が文殊山の麓にある剛水山清涼寺から本堂を目指し参道を練り歩きます。その様子はまさに華麗な平安絵巻。地元で長く愛されてきた伝統のあるお祭りです。

安部貞任の開いた安倍文殊菩薩堂は、長きにわたりこうして大切に守られてきました。

 

非業の死を遂げた安倍貞任には意外な一面も

以前、東北地方以北は大和朝廷の支配下になく、蝦夷と呼ばれる原住民が住んでいました。つまり、奥州は当時の大和朝廷にとっては他の民族であり外敵という認識だったと言えるでしょう。

その中で大和朝廷から6つの郡を司る役職「六郡の司」と呼ばれる地位を与えられたのが安部氏です。陸奥国奥六郡を治めていた安倍氏は、俘囚の長として東北で絶大な権力を持っていました。

その支配は現在の福島県にも及びここ田村エリアも安倍氏の支配下にあったと考えられます。安部氏の権力は貞任の父である安倍頼時の時代に最大となりましたが、次第に朝廷との関係も悪化。貞任は父とともに朝廷と敵対し、対立を深めていきました。

その結果「前三年合戦」「前九年合戦」へと突入していきます。前九年合戦の最終決戦と言われる厨川での戦いを描いた、歌川芳虎作の「奥州征討」という合戦浮世絵にはその様子が描かれています。朝廷より任じられていた鎮守府将軍の源頼義率いる討伐軍との間で、安倍貞任は苦戦を強いられて敗北してしまいした。1051年から62年の「前九年」の終戦とともに安倍氏は滅亡したと言われています

こうして安倍氏の隆盛は終焉を迎え歴史の表舞台から消えましたが、その血筋は奥州藤原氏につながったとされています。さらに藤原氏の滅亡後も再び安倍氏を名乗り、現在までその名が残っているとの説があります。また、磐城国三春藩主家の秋田氏は安倍貞任の末裔と伝えられており、安倍文殊菩薩堂は、藩主秋田氏歴代の祈願寺でした。

激しい戦いの時代に身を置いた安部貞任ですが、古今著聞集にあるのは意外なエピソード。「衣のたて」に、前九年合戦の中で源義家と連歌を交わした様子が優雅に描かれています。

安倍貞任を追い詰めた源氏の義家が、逃げる貞任に「衣のたてはほころびにけり」と呼びかけたところ、貞任は振り返って「年を経し糸の乱れの苦しさに」と返したそうです。それを聞いた義家は感心し、弓に番えていた矢を外し、帰ってしまいました。

「たて」が衣の縦糸と館を表し、「いと」が糸と意図、「ほころび」は敗れるのと糸のほころびをかけた技巧的な歌。学業成就の鎮守様、文殊堂を祀った安倍貞任の教養をにおわせるエレガントな伝説ですね。

 

「安倍貞任」の歴史、文化的な価値、魅力とは?

安倍貞任の足跡をたどってみましたが、いかがでしたか。田村市を訪れたら、安部貞任ゆかりの安倍文殊堂へぜひ訪れてみてください。神秘的な空間は一見の価値あり。安部貞任の活躍した古代11世紀へと思いをはせて、つかの間のタイムスリップ感覚を味わってはいかがでしょうか。ぜひこの機会に歴史を感じる福島県田村市に足を運んでみてくださいね。

 

「安倍貞任」の歴史、文化的な価値、魅力

・安倍貞任は平安時代陸奥国領主として広く東北地方を治め、現在の田村市を訪れていた。
・安倍貞任が文殊山に菩薩をお祀りした安倍文殊堂は、今なお大切に守られている。
・陸奥国三春藩主の秋田家は、安部貞任の末裔と伝えられている。
・安部貞任は、凄惨な最期を遂げた一方で高い教養を備え、ドラマティックな伝説を残している。

ふかしま。
レビューの平均:  
 0 レビュー

レビュー投稿
1
2
3
4
5
送信
     
キャンセル


レビュー投稿

ふかしま。編集部
ふかしま。編集部